2006年01月12日

シニアに挑戦;アクテアハート F

<コミュニケーション>
「美しい50歳がふえると、日本は変わると思う。」というコピーでアクテアハートは登場しました。

モデルとしては、社会で活躍している50代間近の女性達を起用しました。メインは、版画家の山本容子さんでした。しかし、1人ではなく複数の女性達に登場してもらうことで、1人のキャラクターに引きずられないようにしました。スタイリストの久米麗子さんや歌手であり料理家の平野レミさん、女優の前田美波里さんなどです。「元気な女性達のブランド」を表現したかったからです。ユーザーとなる「あなた」も含むそんな人たちにエールを送ると言う意図がありました。すなわち、年齢を重ねても輝いている女性の姿・生き方がテーマだったのです。

コピーライターがいきなり「50歳」という言葉を採り上げて提案してきた時には戸惑いました。「エイジレス」であり、年齢を採り上げるのはタブーだと分っている筈なのにです。しかし、その原則観念は見事に打ち砕かれました。それは、「美しい50歳がふえると、日本は変わると思う。」と言うポジティブな宣言だったからです。加えて、モデルとして登場する女性達の姿だったのです。「さすが!」と思いました。実を言うと、対象とする人達に、年齢を訴求しないで「自分向けのブランド」であることをどの様に伝えたら良いのかと悩んでいたのです。同年代のモデルを起用する当たり前の方法では、インパクトに欠け、このブランド導入の意味がありませんでした。

このコピーは世の中に強いインパクトを与え、多くの反響がありました。早速、取材が殺到。今でも印象に残っている取材があります。それは、新聞社からの
取材です。2件あってどちらも30歳前後の女性記者から。同じことを言われました。「(私自身の)自信になりました。」という言葉で、男女雇用機会均等法以降に社会人になって活躍していた彼女達から強い共感を得たのです。自分達の将来、そして今を応援しているメッセージとして受け取ったのだと思います。もちろん団塊の世代を含む50歳前後を中心にした人からの共感も多く頂きました。

まさに「アクテアハート」は、「資生堂によるシニアマーケティング宣言ブランド」となったのです。すなわち、「資生堂がシニアに目を向け始めた」というメッセージを発信し、受け入れられたのです。

ある時、ある人から言われたことがあります。それは、「美しい50歳の男性がふえると、日本は本当に変わると思う。」です。あれから10年が経とうとする今、ようやくその兆しが見え始めてきたような気がしますが、いかがですか?

しかし、そこまでだったのです。売上は、計画の半分程度でした。とは言っても一般的に見たら、かなりの実績です。計画値が高かったのかもしれません。大きな要因は、お客さんとの接点でした。店頭での紹介が上手く行かなかったのです。計画値云々とは別に、これが実態であり、課題でもあるのです。

店頭では、「50歳だから=もう年なんだから」と言うように、タブーである「年齢=年寄り」の表現をせざるを得ず、販売する方も買う方にも戸惑いが生じていました。結果として、以前から使っていた化粧品(エリクシールなど)を続けることになった例が多くありました。

今、資生堂では全体商品体系の骨格となるコアブランド群がありますが、「アクテアハート」はその中に入っていません。残念ながら、必ずしも成功したブランドとは言えないのです。そして、注力もされていません。

売上実績とは別に、当時はまだ、あまりシニアマーケティングが行われておらず、様々な取材やセミナー講演の依頼も多く受けました。多くの聴講者は、必要性がわかり始めてはいたものの、中々踏み出せない企業からです。セミナーの最後では、「とりあえず始めてみることが必要ではありませんか?」と言って締めくくりました。そして、もうひとつ加えたのは、「本心は、まだ待って欲しいのです。」と。その理由は、こちらが始めたばかりで追いつかれたくなかったのです。しかし今、その時の危惧が当たり、多くの企業・業界でシニアマーケティングが進められた結果、大きく遅れをとっているのが実情ではないでしょうか?

年末に、セミナー講演での副収入で、初めてマイパソコンを買ったのを思い出します。まだ、Windows95でした。

posted by jtoki at 08:18| Comment(1) | TrackBack(0) | 実践版商品企画の記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちわ

TBありがとうございました。ファッション流通ブログde業界関心事のtakaです。

とても共感できるエントリーで思わず読み込んでしまいました。

覚えてます、このCM。素敵だな、と思ったのを。

昔は、インパクト系や一方通行的なコピーが多かったような気がしますが、今、ようやく生活者の目線に立った双方向的なコピーが増えてきたような、感もあります。

昨年のキットカットが行った「きっと勝つ」のキャンペーンは大好きでした。

また、寄らせていただきます。

これからのどうぞよろしくお願いいたします。
Posted by taka at 2006年01月12日 16:03
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